背景

プラスチック中のカドミウム(Cd)分析を行なう場合、Cd の蛍光X 線エネルギー(Cd-Ka :23.2keV)が高い為、試料の厚みや形状によって発生する蛍光X 線強度が変化します。(試料マトリクスが塩化ビニル系などの場合、飽和厚みは約5mm 程度)試料の厚みや形状によるCd 強度の変化は直接分析誤差として反映されます。しかしながら、分析試料の厚みや形状を統一することは実際の測定現場では困難であります。そこで、試料から発生する散乱線を利用した補正法を用いることによって形状・厚み補正を行う事ができましたのでご紹介致します。

測定条件

  • 装置:OURSTEX150RoHS
  • 検出器:シリコンドリフト検出器(SDD)
  • 管電圧・電流:48kV-AUTO
  • 測定時間:100sec

測定結果

 試料厚み

250ppm の塩化ビニールシート標準試料(厚み2mm)を用いました。このシートを2~ 3 枚
重ねて分析し、補正を行なった場合と補正を行わない場合で比較しました。
この結果を表1 に示します。なお、検量線はシート1 枚の状態で作成しました。
プラスチック中のカドミウム分析における形状・厚み補正法測定結果

補正を行わない場合は、枚数を重ねるにつれて定量誤差として反映されますが、
補正を行う事によって試料厚みの影響を軽減できるという結果が得られました。

 試料形状

試料写真 電線被覆を測定する場合、試料の曲面形状や内部
の空洞部の影響によってCd の定量誤差が起こり
ます。電線被覆( 図1 ) についてICP との相
関を表2に示します。

プラスチック中のカドミウム分析における形状・厚み補正法測定結果

 まとめ

散乱線を利用した補正法を用いることによって、様々な試料の形状や厚みの試料に
対しても良好な結果が得られました。

推奨装置

エネルギー分散型蛍光X線分析装置「OURSTEX160RoHS」